FactSpot を作り始めた話、 そして 6 月のアップデート
メディア事業の支援を仕事にしていると、 編集現場で繰り返し聞くフレーズがある。
「いい記事だと思って出したけれど、 検索からの流入が伸びない」 「Chartbeat の読了率は高いのに、 SNS では刺さらない」 「リライトすべきか、 新しい記事を書くべきか、 判断軸が欲しい」
これらは別々の症状に見えて、 根は 1 つだと思っている。 記事の質を「実測する道具」 と 「言語化する道具」 が分断されている という構造的な問題だ。 サーチコンソールは検索面のシグナルしか見ない。 Chartbeat はリアルタイムのエンゲージメントしか見ない。 LLM ベースの校正ツールは表現の話しかしない。 編集者は結局、 ばらばらの数字とフィードバックを頭の中で統合し続けている。
FactSpot は、 この 3 つを 1 つのフローにまとめたかった。 URL を 1 本投げ込むと、 コードで実測する 25 項目超の機械検証 (llms.txt / robots.txt / Schema.org / OGP / 著者情報など) と、 AI による編集設計 ・ 反証データ ・ 不適切表現の診断と、 既存記事のリライト提案を、 一気通貫で返す道具。
なぜ自分で作るのか
正直に言うと、 こういうカテゴリのプロダクトは大手が作ってもおかしくない。 一方でメディアの現場で「使い倒したい道具」 として育てるには、 自分自身がヘビーユーザーであることが近道だと思った。 関わっている地方紙の web 展開、 ニュースサイト、 リサーチ系のメディアと、 既に複数の dogfood の場が手元にある。 ここで実運用しながら磨き込んでいく。
「データ分析の SaaS だが、 編集者の手応えに最後まで合わせ込む」 ことを設計の中心に置いている。
6 月のアップデート (実装メモ)
ここ 1 ヶ月で入れた主な機能を、 一度棚卸ししておく。
プランと課金: Free / Pro / Team の 3 段階を確定。 Free は記事分析 月 10 本 ・ ドメインスキャン 5 本固定 ・ ライティング 月 15 セッション ・ ポートフォリオ 3 サイト ・ 履歴 30 日。 Stripe Checkout で 1 クリック決済 + Customer Portal でセルフ解約。 招待制の Contributor プランも別に用意し、 編集パートナー向けに権限を渡せるようにした。
ポートフォリオのスタイル分析: 登録したサイトの記事を 10 本サンプリングして、 文体 ・ 想定読者 ・ 構成傾向を LLM で言語化 ・ 保存。 そのサイトでライティングするときの prompt に自動で混ぜ込む。 「サイトごとの個性を学習する」 という当たり前のことを、 ちゃんと自動化した。
横断ダッシュボードと月次サマリ: 複数サイトを運営している人向けに、 全サイトの記事スコア推移と直近のスキャン履歴を 1 画面で。 月次で LLM が「先月の傾向」 をまとめてくれる。
運営管理 (/backstage): 登録ユーザーを「アクティブ / オンボーディング候補 / 休眠」 で自動セグメンテーション。 サインインしたきり何も使っていない人をフォローする導線を作った。 動的に admin を付与 ・ 解除する機構と、 すべての admin 操作の audit log も同時に。
モバイル最適化と動線整理: 主要 page のテーブル overflow を全て修正、 タブ ・ ボタン群を mobile 優先で再設計。 ドメインスキャンから個別記事のフル分析に進んだ後、 元のスキャン画面に戻る導線も追加。 細かい改善だが、 編集現場の往復回数を直接減らす変更。
API ・ 連携: Chartbeat / GA4 / Slack Webhook の接続テストボタンを設定画面に追加。 「設定したけど通っているか不安」 という状態を排除した。
これから
直近で考えていることは 2 つ。
第一に、 自社で関わっているメディアでの本格 dogfood。 「データを多く溜める」 「ベンチマーク化する」 という方向は、 道具を信頼してもらうためのほぼ唯一の道だ。 7-14 日で 5-10 媒体 × 100-300 記事を回す目標を立てている。
第二に、 編集者にとっての「使いやすさ」 をもう一段引き上げる UX 改善。 数字を集めて出すだけのツールは飽きられる。 「次に何をすべきか」 が 1 アクションで分かるところまで、 設計を詰める。
詳しくは factspot.app から。